探偵という職業は、クライアントの抱える不安や問題を解決することを生業とする点で、極めて信頼が求められる分野です。探偵とは法令や倫理を厳守し、クライアントの利益を最優先に考え行動するべきだと私どもは考えています。しかし一部には、探偵と名乗りながらその肩書きを悪用してクライアントの弱みにつけ込む悪徳探偵業者も存在します。

悪い探偵の特徴

　あるクライアントは、夫の様子が最近不自然になったことから、浮気を疑いインターネットで見つけた格安調査をうたう探偵事務所に相談しました。電話口に出た担当者は親切そうな口調で「今すぐ契約すれば特別割引が使える」と強調し、無料相談と言いながらも実際には契約を急かす方向へと誘導しました。とある喫茶店で面談を行いましょうと探偵業者に提案されて出向くと、担当者はクライアントの不安を煽るように「ご主人はほぼ間違いなく黒です。」「証拠がなければ慰謝料も取れませんよ。」と断言し、調査が複雑化するとまくし立てて、最初に説明した額とは比べものにならないほど高額なプランを提示しました。クライアントが躊躇していると半ば脅すような口調に変わったといいます。調査契約を結んだ後も問題は続きました。報告は曖昧で「対象者の動きなし」という一文だけのメールが続くだけで、写真の提出を求めても「現在整理中」と逃げられ、やっと届いた資料は解像度の低い写真数枚のみで、写っている人物が本当に夫なのかも確認できませんでした。写真や報告書には日時の記載すらなく、クライアントが説明を求めても「これは機密なのでお答えできません。」と一点張り。調査終了後に有益な証拠は一つもなく、追加費用を請求されるだけで終わりました。契約書をよく見ると「調査結果の内容を保証しない」「追加費用は事後請求する場合がある」など、多数の不利な条項が小さく記載されていました。結果、クライアントは精神的にも金銭的にも深く傷つく結果となりました。

　

良心的な探偵の特徴

　一方、同じように夫の様子に不信感を抱いたあるクライアントは、地域に根付いた探偵業者に相談をしました。電話相談では、担当者が「感情的になり過ぎると判断を誤ることがあります。」と前置きした上で、状況を丁寧にヒアリング。調査が本当に必要かどうかまで含めて親身に相談に乗ってくれました。その後、探偵事務所で面談をし、調査方法、かかる費用、追加費用の可能性、そして個人情報保護の取り扱いに至るまで丁寧に説明してくれました。「結果が出ない場合は、無理に延長を勧めません」と言われたことで、クライアントは安心して契約を結ぶことにしました。調査が始まってからは、進捗報告がこまめに行われ、報告内容も日時・行動・移動経路が分かりやすく整理されていました。証拠写真も鮮明で、対象者が誰であるかが明確に確認でき、写真の撮影地点や状況の説明も添えられていました。最終的に夫は不倫をしており、探偵業者は調査終了後に書面にて裁判で証拠になりえる調査報告書を提出しました。そして、クライアントに取引のある弁護士を紹介し、このような探偵業者の誠実な対応にクライアントは心から感謝の言葉を贈ったそうです。

　悪い探偵と良心的な探偵、上記の２例は対照的ですが、探偵を選ぶ際に非常に重要なポイントを浮き彫りにしています。

　まず、重要なのは料金体系の透明性です。悪徳業者は成功報酬・調査着手金と称して曖昧な金額を提示して契約後に追加料金を積み上げます。優良な探偵業者は、稼働時間、人数、機材費などを具体的に説明し、見積書を文書で提示します。「実際にやってみないと分からない」「費用は後で請求する」といった曖昧な回答しか得られない場合は契約を見送る、もしくは先延ばしにするべきだと思います。悪い探偵は調査報告が不透明で、証拠能力が低い。説明責任を果たさず、問い合わせにも不誠実。これに対して、良心的な探偵は丁寧なヒアリングを行い、調査の必要性を冷静に説明します。契約内容・料金・調査方法を明確に示し、途中経過を透明に報告し、証拠の質にもこだわります。

　

　また、契約書の内容も判断材料となります。探偵業法では契約前に調査方法、期間、料金、返金条件などの説明が義務付けられています。悪徳業者は契約を急がせ、内容を読ませないまま署名させようとします。「今契約すれば安くなる」「他の人に取られる」などの急かし文句が出たら警戒が必要です。

面談時の 態度や情報の扱い方にも注意が必要です。誠実な探偵はクライアントの話を丁寧に聞いて法に触れる依頼については明確に断ります。一方、悪徳業者は「何でもできる」「違法なことでもバレない」といった過剰な自信を見せることがあります。こうした姿勢は法令順守の意識が低い証拠であり、トラブルに巻き込まれる可能性があります。クライアントに関する情報を軽々しく扱ったり、他人の個人情報を話題にするような業者も危険だと言えます。

　最後に、実際の口コミや評判を確認することも有効ですが、すべてを鵜呑みにするのは危険です。評価サイトの内容は操作されている場合もあり、極端に高評価だけが並ぶ探偵業者は逆に疑ったほうがいいでしょう。複数の情報源を比較し、事務所の所在地が実在するか、探偵業届出証明書が掲示されているかなど基本的なチェックを怠らないことも重要です。探偵という職業は、クライアントのプライバシーと人生に深く関わる仕事です。ただ調査すればいいという姿勢ではなく、クライアントを守るという使命感を持って調査に取り組んでいるのが良心的な探偵と言えるのではないでしょうか。