配偶者の浮気は、結婚生活において最も深刻な裏切りの一つです。信頼を基盤として築かれるはずの夫婦関係が、一方的な行為によって踏みにじられたとき、被害を受けた側は深い精神的苦痛を負います。そのような状況におかれた時、多くの人が悩むのが「慰謝料請求をするべきか、しないべきか」という問題です。ここでは、慰謝料請求をする場合としない場合、それぞれのメリット・デメリット、そして判断に際して考慮すべき点について話したいと思います。
1 慰謝料請求をする場合
慰謝料請求とは、配偶者や浮気相手に対し、不貞行為によって受けた精神的損害の賠償を求める行為です。法的には、不貞行為は民法上の不法行為に該当し、証拠があれば慰謝料請求が認められる可能性が高いです。
慰謝料請求をする最大の意義は「自分が受けた苦しみを正当に評価してもらうこと」にあります。裏切られた側は、怒りや悲しみ、自己否定感など、計り知れない精神的ダメージを負っています。それを「なかったこと」にせず、金銭という形で責任を取らせることは、自分自身の尊厳を守る行為とも言えます。
また、請求を行うことで、配偶者や浮気相手に対し、行為の重大さを自覚させる効果もあります。特に、今後も婚姻関係を継続する場合、曖昧な処理で終わらせると「結局許された」という誤った認識を与え、再発のリスクを高める可能性があります。慰謝料請求は、一つのけじめとして機能することもあるのです。
さらに、離婚を選択する場合には、慰謝料は新しい生活を始めるための現実的な支えにもなり得ます。引っ越し費用や生活再建のための資金として、精神的・経済的な意味を持ちます。
一方で、慰謝料請求にはデメリットも存在することもあります。証拠の収集や弁護士への依頼など、時間と労力、費用がかかる場合があります。また、交渉や裁判の過程で、浮気の詳細を何度も思い出さなければならず、精神的負担が大きくなることも少なくないでしょう。相手が逆上し、関係がさらに悪化するケースもあります。
2 慰謝料請求をしない場合
慰謝料請求をしないという選択は、決して「泣き寝入り」や「弱さ」を意味するものではありません。そこには、個々人の価値観や人生設計に基づく合理的な判断が存在します。
請求をしない最大のメリットは、精神的消耗を最小限に抑えられる点が挙げられます。争いを続けるよりも、早く過去を手放し、自分の人生を前に進めたいと考える人にとって、慰謝料請求をしない選択は有効であると言えるでしょう。特に、相手とこれ以上関わりたくない場合、法的手続きを避けることで心の平穏を保てることもあります。
また、婚姻関係を継続する意思があり、配偶者が真摯に反省し、再構築を望んでいる場合には、慰謝料請求をしないことで関係修復が進みやすくなるケースがあります。金銭的な制裁よりも、カウンセリングや話し合いを重視する選択も、一つの在り方でしょう。
しかし、請求をしないことにはリスクも伴います。明確な責任追及を行わないことで、浮気が軽視され、再発につながる可能性があります。また、後になって「やはり請求すればよかった」と後悔する人も少なくないのも事実です。感情が落ち着いた後に、自分の苦しみが正当に扱われなかったと感じることもあります。日本での不貞行為の慰謝料請求の時効は不貞行為は民法上の不法行為にあたるため、知った時から3年です。配偶者が浮気の事実、浮気相手が誰かを知った時から3年で時効となります。また、浮気の事実を知らなくても不貞行為があった時から20年で時効となります。このどちらか早い方が成立すると、慰謝料請求はできなくなります。
3 判断のために考えるべきこと
慰謝料請求をするか否かは、「正解」が一つに決まっている問題ではありません。重要なのは、自分が何を守りたいのか、何を優先したいのかを明確にすることです。100人の人がいれば100通りの考え方があるように大切にしているものも人それぞれです。
・離婚するのか、関係を続けるのか
・相手にどこまで責任を取らせたいのか
・これ以上、精神的エネルギーを使える余裕があるのか
・将来、後悔しない選択はどちらか
これらを冷静に考えることが、後悔の少ない決断につながります。感情が激しく揺れている時期には、信頼できる第三者や専門家に相談することも有効ではないでしょうか。
4 おわりに
配偶者の浮気は、被害を受けた側の人生観や自己評価に大きな影響を与える出来事です。また、夫婦関係だけでなく、子どもの人生や心にも大きな影響を与えることがあります。整理すると、主に次のような点が考えられます。慰謝料請求をする場合も、しない場合も、その選択は「自分の人生をどう生きるか」という問いに直結しています。他人の意見や世間体に流されるのではなく、自分自身の心と向き合い、納得できる選択をすることが何よりも大切です。

